テキストサイズ

禁断兄妹

第35章 一人じゃない


萌に連れられてやって来た
都内の大きな病院


「ここだよ」


歩きながら萌が指し示したのは
緩和ケア病棟の文字

緩和するしかないってことかよ

俺は今更ながら
気持ちが引き締まるのを感じた。


「お母さんには昨日電話してあるから、直接お部屋に行こうね」


少しずつ普段の調子を取り戻してきた萌が
俺に笑いかける。


「‥‥うん」


長い廊下
薬品臭

俺たちの靴音だけが頭の中に響いて
耳鳴りに変わる。


「‥‥柊」


小さな声

手を握られてはっとする。


「大丈夫だよ、柊‥‥」


繋がれて
自分の手がひどく冷たくなっていることに気づく。


「‥‥俺、病院苦手なんだ‥‥」


「うん‥‥大丈夫」


強くなる萌の手の力
温かい。


「ありがとうな‥‥」


そうだ
俺はもう
一人じゃない

ストーリーメニュー

TOPTOPへ