禁断兄妹
第37章 永遠の愛を
「ねえ、柊は今年海に行った?」
「撮影で何回か行ったよ‥‥ここも、八月くらいに来たんだ」
「そうなんだ‥‥撮影で、だって。ふふ、カッコいい」
撮影で初めてここを訪れた時
美しい場所だと思った。
萌を連れて来たら喜ぶだろうな
そう無意識に考えた次の瞬間
そんな日は永遠に来ないと自嘲した。
でも今
隣には笑顔の萌がいる。
こんな日が来るなんて
昨日までの俺には想像さえできなかった。
「はい、こっち向いてくださーい」
萌が顔の前に両手を上げて
目の辺りに指で四角い形を作る。
「カシャ」
「‥‥?」
「もう一枚!はいもっと笑って‥‥カシャ!」
「あ、カメラなんだ」
「カメラ以外に見えますか?」
「そういう形じゃないから‥‥」
笑う俺に
萌はカメラを顔から下ろす仕草をして口を尖らせる。
「細かいことはいいんです。カメラマンの指示に従ってください」
「‥‥すみません」
撮影という言葉を聞いてカメラマンごっこをしたくなったらしい。
「じゃあ、カッコいいポーズしてください」
萌は再びカメラを構える。
「カッコいいポーズ?‥‥こういうの?」
俺はコートの襟を両手で立てるように掴んで
睨むように萌を見た。
「わあ、モデルみたい!カシャ!」
「モデルなんだけど‥‥」
「もう一枚!ちゃんとポーズ変えてください!」
楽しそうな萌
可愛くて
言われるままにポーズをとる。
「あ、そういうのもモデルっぽい!カシャ!」
何枚かシャッターを切った萌が
満足そうな顔でカメラの形の手を顔から下ろす。
「じゃあ次はねー」
「あ、まだやるんだ‥‥」
「あのね、私、柊のカッコいい顔もすごくいいと思うんだけど、私は笑ってる柊が好きなので、次は笑顔でお願いします」