禁断兄妹
第38章 あなたを助けたい
「‥‥!」
「あっ、びっくりさせてしまいましたか、すみません‥‥」
灰谷さんは私があまりにも驚いてしまったせいか
焦ったように頭を下げた。
「いえ、あの、ただいま、です‥‥」
私は貝殻を持つ手を急いでポケットに入れた。
いつからいたんだろう
全然気づかなかった
今日は灰谷さんの出番の日だったろうか
心臓はばくばくと音をたて
私の呼吸を乱す。
「それ、何ですか‥‥?」
気を取り直したように灰谷さんが微笑む。
「いえ、別に‥‥」
「‥‥そうですか」
私はそっと灰谷さんの表情を伺った。
緊張した何か言いたげな面持ち
いつものおおらかな笑顔とは
明らかに違う。
胸に広がる
黒い雲のような不安
「じゃあ、失礼しますっ」
私はお辞儀するように顔を伏せると
そのまま灰谷さんの横を足早に通り抜けて
エレベーターへと向かった。