禁断兄妹
第39章 和虎
「あらっ?!虎ちゃん?!」
カランという扉の開く音に振り返ったママが
俺を見て飛び上がらんばかりに驚く。
「ママ、ご無沙汰ーっ」
高校生の頃から出入りしている行きつけのゲイバー
ここへ来るのは要と柊兄がニアミスしたあの日以来
約三ヶ月ぶり。
柊兄との電話の後一度は家に帰ったけれど
いてもたってもいられなくなった俺は
あれ以来頑なに避けていたこの店へやって来た。
「きゃー!虎ちゃん?」
「やだ久しぶりーっ」
カウンターに居並んだ常連客達が歓声をあげる。
十人も入ればいっぱいのこの店に今日は七、八人の客
それとなく見回したその中に要の姿はない。
俺は無意識に詰めていた息をそっと吐いた。