禁断兄妹
第40章 二人の守護者
数時間前───
灰谷さんから逃げるように駆け込んだ家の中
お母さんはまだ帰ってきていなくて
しんと冷えきった薄暗い空間が広がっていた。
足をばたつかせるように靴を脱いで家の中に入ると
走って家中のカーテンを閉めて
全部の部屋の電気をつけて回った。
リビングのテレビをつけると
明るい室内に楽しげな人の声が流れて
少しだけほっとする。
でも
身体の震えは収まらなかった。
エアコンの温度を思いきり上げて
コートを着たままソファに腰を下ろして息を整えていると
携帯にお母さんからの電話
何時頃家に着くの
早く帰って来て
そう言おうとした私の耳に
あのね萌
辛そうなお母さんの声が聞こえた。
お父さんの体調が思わしくないから側についていたい
今日も病院に泊まろうと思うの
目の前が一気に暗くなった。
今日だけは帰って来てお願い
そう言いかけて
でも
飲み込んだ。
お父さんもお母さんも頑張ってる
私だって頑張れる
柊にそう言ったのは私
それに
灰谷さんの事はお母さんに話せない。
わかったよ
私は大丈夫だからお父さんについていてあげて
精一杯しっかりとした声を出して
なんとか電話を終えたけれど
息苦しいほどの恐怖感に襲われる。
怖い
お父さん
大丈夫なの
私も病院に行きたい
でも
もう出られない
下には灰谷さんがいる。
怖い
お父さん
お母さん
柊
怖い
ソファの上
私は震える膝を抱えて丸くなった。