禁断兄妹
第40章 二人の守護者
「なんの話だ」
「萌さんは、今家に一人です。あなたを行かせるわけには、いかない」
穏やかな口調だが
有無を言わせないような殺気を感じる。
『とんでもない悪魔』から萌を守ろうと正義感にでも燃えてるのか
俺は小さく笑った。
「家族が待つ家に住人を帰さないとは呆れる。なんなんだ、あんた」
「その家族に、酷い行為を強要しているのは、あなたでしょう」
「はあ?なんの話だ」
「私は昨日、あなたと萌さんの会話を聞きました。とぼけるのはやめてください」
「意味不明だな‥‥いずれにしろ気分が悪い。後日マンションの住人として、あんたの解雇を申し出るよ」
エレベーターの扉が開いて
乗り込もうとした俺の肩に灰谷の手がかかる。
「お引き取りください」
「‥‥離せ。でないと今すぐ職を失うぜ」
「それでも構わない。あなたを行かせるわけには、いかない」
引き倒そうとするかのように
俺の肩に食い込む武骨な指先
痛みを感じるほど力がこめられている。
「肩は凝っちゃいねえよ‥‥離せ」
「離さないと言ったら‥‥?」
俺は爪を立てた手で力任せにその手を剥ぎ取ると
振り向きざま
灰谷のみぞおちに前蹴りをぶち込んだ。
「‥‥っ!」
思いきり体重を乗せたそれは
灰谷の身体を後ろへ二三歩よろめかせた。
片膝をつき
胸を抑えながら顔をしかめてる灰谷
「くそ‥‥っ」
鋭い眼光で俺を睨みつける。