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「‥‥！」


灰谷が目を見開く。

慌てて立ち上がると
胸に手を当てたまま萌に一礼した。


「あっ、灰谷さん、お疲れ様ですー」


萌はのんびりとした声でそう言うと
俺を手招く。


「なかなか上がってこないから、迎えに来ちゃった‥‥ほら、言ってたテレビ番組、始まっちゃうよ」


「ああ」


俺は萌が扉を開けて待つエレベーターへと乗り込んだ。

マンションの入口を解錠する為に
さっきインターフォンで萌を呼んだ。
灰谷とのトラブルを心配して
無理して降りてきたんだろう。

平静を装ってはいるが
ボタンを押す指は震えていた。

閉まっていく扉

立ち尽くす灰谷が
俺達を
いや
萌を
食い入るように見ていた。