禁断兄妹
第40章 二人の守護者
「それはありえない。だとしたらさっき萌が来た時に、何かアクションを起こしてるさ」
エレベーターに一緒に乗り込むことも
萌の手を取って引っ張り出すことも
至近距離にいたあいつにはできたはず
でもしなかった
何故そうしなかったのか
動きを止めたまま
食い入るように萌を見つめていた灰谷
その顔を見た俺には
わかっていた。
「あいつは、お前の前では手荒な事をしたくないんだろうよ」
萌は黙ったまま
複雑な表情で俯いた。
胸に当てた手を強く握り締め
燃えるような目をしていた灰谷
あいつを突き動かしてるのは正義感なんかじゃない
恋愛感情だ。
少し仲が良かった
そう言っていた萌
あいつが秘めている想いを
お前は知っているんだろうか
そしてあの灰谷も
ひと回り以上年が離れてるであろう萌への想いが
恋愛感情だと
自覚しているんだろうか
それはわからなかったし
わかりたくもなかった。