禁断兄妹
第45章 灰谷とタカシ
ぼんやりと余韻に身を任せている萌
その息が整うのを待ってから
俺は口を開いた。
「‥‥灰谷のこと、聞いてもいい?」
「うん‥‥」
少しだけ固くなった身体
なだめるように頭を撫でた。
「言える範囲でいいから、今日あいつが萌に言ったこと、教えて欲しい」
「うん‥‥柊と別れた後、しばらくあそこに立っていて、貝殻を見ていたの。そしたら、いつの間にか灰谷さんが隣にいて‥‥」
萌は言葉を選びながら
ゆっくりと話し始めた。
昨日の夜
萌が俺に渡そうとして落とした手紙を拾った灰谷
木陰で交わした俺達の会話とキス
ほぼ全てを灰谷に聞かれていた。
俺の言いつけ通り
何のことかわからないと言った萌を追いかけて
性的虐待を受けたんじゃないか
かばっているのかと
強い口調で食い下がったようだ。
「私のことを心配してるっていうより、すごく怒ってる感じで‥‥本当に怖かった‥‥」
俺は回した両手に力をこめてより肌を密着させると
細い肩に唇を押し当てた。
「手紙を落としたのも、見られたのも、俺のせいだ‥‥怖い思いさせて、ごめん」
「ううん、柊は悪くない。あの時は、私も夢中だった‥‥今思い出しても、胸がいっぱいになる‥‥あの時のこと、きっと一生、忘れない」
「俺もだ‥‥」
───お前の好きと俺の好きは違う!俺の『好き』は、こういう『好き』なんだ‥‥っ───
───私の好きだって、そういう好きだよ‥‥っ!お兄ちゃんのことがずっと好きだったの、好き、なの‥‥っ!───
互いの気持ちが溢れて
ぶつかり合って
一つになった想い
月明かりの中
激しく求め合った口づけ
涙の味がした。
「この身に代えてもお前を守るって、俺あの時言ったよな‥‥必ず萌のこと、守るから」
「うん‥‥」
俺の腕に重なっている小さな手が
ひどく愛おしかった。