テキストサイズ

禁断兄妹

第45章 灰谷とタカシ


「灰谷さん‥‥本当はいつも優しいの。なのに今日はすごく怒って、怖かった。
 私がやめてくださいって大声出したら、はっとしたみたいで‥‥追い詰めるつもりはないって、私の味方だって‥‥助けたいだけなんだって、言ってた‥‥」


その時の灰谷を思い出しているのか
萌は言葉を沈ませた。


「怖い思いをしたんだろ‥‥いいか、もうあいつに気を許すな」


萌は黙ったまま小さく頷いたけれど
本当はいつも優しい
その言葉が俺は気にかかっていた。


「なあ、萌とあいつって、いつから、どれくらい親しいの?」


「柊が家を出ていってしばらくしてから‥‥それまでは挨拶をするだけだったんだけど、灰谷さんが目の上を怪我してたことがあって、絆創膏あげたの。そしたら次の日にお礼だってクッキーをくれて‥‥それ以来、たまに立ち話するようになったの」


「‥‥」


俺は思わず大きく息を吐いた。

知らない奴にはついていくな
食い物をもらうな
萌が小さな頃から言ってきた言葉

もうそんなことを言うほどちっちゃな萌じゃないって
頭ではわかっているが
絆創膏
お礼の菓子
その様子を想像して俺は身体が熱くなるのを感じた。


「立ち話って、どんな話をしているんだ」


「私の学校のこととか、普通のこと‥‥後は灰谷さんの試合のこととか聞いたり‥‥」


萌の学校の話
たわいのない普通の話
それを萌の口から聞くのが俺は好きだった。

きっと灰谷も同じように
萌との何気ない会話を楽しんでいたのだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ