禁断兄妹
第47章 優しくしたいけど、無理かも知れない~ベッドの上で⑤~
温かな声
まぶたに優しく押し当てられた唇
泣き出したいほど嬉しくて
ただ何度も頷く。
待ってろ、じゃなくて
一緒に
そう言ってくれたことが
すごく嬉しい。
今日―――
柊が病室から出ていった後
お母さんも出ていって
私とお父さんは二人きりになった。
柊を連れて来てくれてありがとうな
お父さんの言葉に
これからはいっぱい連れてくるからねって答えたら
あいつは病院や病人が苦手なんだ
あんまり無理はさせるな
優しく諭すようにそう言われた。
───柊の母親は病気で亡くなったと、それだけは前に言ったよな。
実は入院していた病院で、居合わせた柊の目の前で息を引き取ってしまってな。
俺は仕事で間に合わなかった。
あいつはまだ小学一年生で、お母さんっ子で、どれほど辛かったかと思うよ。
だから、無理はさせなくていいから───
それを聞いて
病院が苦手だと呟いた柊の氷のように冷たかった手と
昨日の夜
お母さんの名前を言おうとして言葉に詰まった瞳が
苦しいほど胸に甦って
いてもたってもいられなくて
私は病室を飛び出してしまった。
柊
私がいる
私はずっとそばにいる
あなたを絶対に一人にしない
心の中で叫びながら
無我夢中で走った。