禁断兄妹
第48章 あなたを許さない
「さあ‥‥覚えてないな」
「萌さんを抱いたまま『具合が悪くて休ませていた』と。私に全てを聞かれていたとも知らず、今と同じように、平然とした顔で」
「平然とって‥‥それが事実だから、当然だろう」
「事実‥‥?」
閃いた灰谷の瞳が矢のように俺を射抜く。
「事実は、これだろう?!」
一瞬で俺の喉元まで伸びた手
マフラーを掴み強く引き下ろす。
「‥‥っ!」
「平然とした顔でしらを切り、その裏で舌を出す‥‥どこまで下衆な男だ!!」
灰谷は吐き捨てると
俺を突き飛ばすようにその手を離した。
冷気の中
露になった俺の首には
激しい情事の名残
萌の指がつけた赤い痕が
筋のように微かに残っていた。
「そのマフラーはあなたの父親の、巽さんの物だ‥‥親しく会話をさせてもらっていたから、見覚えがある。それで巧く隠したつもりか?!」