禁断兄妹
第49章 美弥子
そして巽さんは微笑みながら手を引くと窓の外に向き直って
柊君から逆に謝られたこと
家には戻らないけれど私と萌のことはちゃんと見守ると言ってくれたことを
話してくれた。
「あいつから、二人で飲みに行きたいと言われたよ‥‥初めてだ」
「いいですねそういうの‥‥嬉しいですね」
「そうだな」
感慨深い声
でも見上げた横顔は
喜びというより真剣な面持ち。
そして巽さんの口元は緩やかに引き締まって
再び組まれた腕
遠くを見つめる眼差しに
心も遠くへ運ばれていく。
柊君とどんな話をしたのかもっと聞きたいけれど
昔から独特の緊張感に満ちた巽さんと柊君の間
立ち入らないのが暗黙のルールだから
巽さんから話してくれないかぎり聞けない。
私は巽さんの隣を静かに離れた。
「はい。肩が冷えますよ」
後ろから肩に掛けたカーディガン
巽さんは小さく頷いたけれど袖を通さず
固く組まれた両腕はそのまま。
巽さんが言うように
柊君の許しを受け入れたのなら
この巽さんの憂いは何なのだろう。
本当は柊君とのことだけじゃない
私はいつも
巽さんの心には入り込めない。