禁断兄妹
第49章 美弥子
ぱちん
何かが弾けるような感覚に身体が跳ねた。
「‥‥っ」
真っ暗な室内
ベッドに巽さんの姿がない。
慌てて立ち上がった私の耳に
「ここにいる」
落ち着いた巽さんの声
カーテンを開けた窓際に
月明かりを受けて巽さんが佇んでいるのが見えた。
「‥‥ごめんなさい、寝ちゃった」
「心配かけて悪かったな。もう大丈夫だから、ちゃんとベッドで寝なさい‥‥って、おい」
私は駆け寄った巽さんの腕を引っ張って腰を屈めさせると
その額に手を当てた。
「あ」
下がってる。
「少しだるいけど、楽になったよ」
「良かった‥‥」
「家、帰らなかったんだな」
「あ、はい」
「看護師に任せてくれていいんだから、熱ぐらいであんまり神経質にならなくていい。萌だって心配するだろう」
巽さんは腰を伸ばしてやれやれという顔をする。
「はい‥‥」
私の頭をぽんぽんとあやすように撫でて
巽さんは昼間と同じようにまた窓の外を眺める。
「又熱が上がったら困ります‥‥横になりましょう?」
「寝てばかりいたから、少し立っていたい」
「そうですか‥‥じゃあ、少しだけ」
私もまた隣に並んだ。
夜の街
月が輝いている。