禁断兄妹
第51章 口に出せない想い
一瞬気をとられてた私はびっくりして
思わず足が止まってしまった。
先輩は固まっている私の前に回り込む。
「俺、来年は三年だし、一ノ瀬とこうやって会えるのも後一年だと思うと、寂しい。もう一度俺と付き合ってもいいなって思ったら、いつでも言ってくれな」
真剣な表情で一気にそう言うと
先輩はひと息ついてにこっと笑った。
「俺には、口に出せない想いはないよ」
凛とした言葉が
私の胸を揺らす。
じゃあ又部活で、と
先輩は手を振りながら上級生用の入口のほうへ走っていく。
その後ろ姿が見えなくなっても
私の胸は揺れたまま。
――――信じてください、私はあなたの味方です!――――
――――私はただ、あなたを助けたいだけなんです‥‥っ!!――――
エレベーターの前
爪を立てるように胸を押さえ
押し殺した声で叫んだ灰谷さん
あの言葉と真剣な瞳を信じて
私は灰谷さんに真実を伝えるべきなんだろうか。
私と柊は愛し合っているのだと
本当に私の味方であり私を助けたいと思ってくれているのなら
どうか柊を傷つけたりせず私達を見守って欲しいと
伝えるべきなんだろうか‥‥