禁断兄妹
第51章 口に出せない想い
「ただいまぁっ」
「おかえりー」
聞こえたお母さんの声
あれっと思うほど明るくて気持ちが弾む。
靴を脱ぐのももどかしく声のしたほうへ走ると
お母さんはキッチンに立って洗い物をしていた。
「おかえり萌ー」
濡れた手のまま
水滴を飛ばしながら私に手を振る。
「お母さんも、おかえりー!」
私は笑いながらお母さんのもとへ駆け寄った。
「二日も留守にしてごめんねー。心配かけちゃったね」
のんびりとした声と明るい笑顔
学校から帰ってきた時にお母さんがいてくれるとすごく安心する。
特に今日は本当に嬉しい。
「お父さん、もう大丈夫なの?」
「うん。昨日も熱が出たんだけど夜にはちゃんと下がったし、もうすっかり落ち着いたの。今日はもう病院に行かないで、家にいるからね」
「良かった‥‥」
お父さんの体調が良くなった事とお母さんが家にいてくれる事
どちらも本当に嬉しい。
「明日も少し出かけるけれど、萌が学校から帰ってくるまでには家に戻るからね」
それに今日のお母さんはなんだか元気そう。
柊がお父さんと衝突してこの家を出て行って
それでもお母さんは気丈に普段通りの明るさでいてくれたけれど
どことなく無理をしている感じがあった。
でも今日の笑顔はとっても自然で
前みたいにゆったりとしている。