禁断兄妹
第52章 由奈
「由奈って感じ悪くない?」
事務所のミーティングルームの前
薄いドア越しに聞こえて来たのは今日撮影が一緒だった娘の声
ドアノブに伸ばしていた手が止まる。
「私とはろくに喋らないくせに、カメラマンとか男の前だと猫かぶってはしゃいでんの。マジうざかった」
「わかるー!由奈って男の前だと態度変わるよね」
「え~そうなんですかぁ~って、声のトーン全然違いますから!」
「そのモノマネ悪意あり過ぎですから!」
一気に盛り上がる部屋の中
三、四人
楽しそうな笑い声
全部女の声。
高校を卒業してから
一年くらい地元でモデルの仕事をしていたけれど
今年実家を離れて東京へ来た。
この事務所に入ってからまだ三ヶ月
所属してる女性モデル達とはほとんど話をしたこともなくて名前さえ知らないのに
みんなは私のことをよく知っているらしい。