禁断兄妹
第52章 由奈
「もー‥‥。ねえ今の話、聞いたなら忘れてっ、ねっ?」
「別に興味ないけど、言われて忘れられるなら、人間便利過ぎだろ」
「あれ、もしかしてご立腹?ふーん、一ノ瀬君も由奈派かー」
「結局男子だねー。騙されてることも知らないでっ」
おどけた調子の嫌みたっぷりな言葉に
「なんだよそれ」
一ノ瀬と呼ばれているその人が苦笑しながら立ち上がった気配
はっとしてドアに張りつけていた身体を離した。
こんなところを見られたら又何を言われるか
忍び足で後退りしたその時
「あいつはいい仕事してるよ。群れて人の悪口ばっか言って腐ってるあんたらより、ずっとね」
よく通る低い声が
軽やかに笑った。