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禁断兄妹

第52章 由奈


「一ノ瀬さーん!」


駅へと向かう人波の中
頭一つ以上出ている彼が振り返る。

立ち止まったその隙に一気に駆け寄る私をじっと見ている一ノ瀬さん
その眼差しに圧倒されて
考えていたよりも手前で足が止まってしまう。

髭跡も見えない滑らかな肌
長めの黒髪が散って
彫りの深さを物語る陰影が夏の日差しに際立っている。

汗だくになってる自分が恥ずかしい
メイクもきっと崩れてる。


「‥‥何?」


「あっ、あの‥‥さっきはかばってくれてありがとうございますっ」


我に返った私は深く頭を下げた。


「別にかばった訳じゃない。思ったことを言っただけ」


口調はそっけないけれど
飾らないストレートな言葉に胸が熱くなる。


「お会いしたことなかったと思うんですけど‥‥私のした仕事、何か見てくれたんですか?」


「ああ‥‥最近オーナーから、期待の新人だって、君が載った雑誌を見せられた。この娘はでかくなるってさ。俺もそう思った」


熱い胸の中
また光が弾ける。


「嬉しい‥‥一ノ瀬さんみたいな人にそう言ってもらえると本当に嬉しいです」


夢見心地で呟いた。


「俺みたいなって、俺は単なるバイトだよ。肩書きは予備校生。それに敬語じゃなくていい。俺まだ19だし」


「えっ‥‥じゅうく?じゃあ、同じ年‥‥?!」


一ノ瀬さんは頷くと
じゃあ又ね、と歩き出そうとする。


「あ、あのっ!」


振り返り
私をちらりと見やる瞳が自然と流し目になって
その艶やかさに言葉が詰まる。


「と、友達になってくれない?!」


「‥‥は?」

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