禁断兄妹
第52章 由奈
「‥‥?!」
「見え透いたお世辞にアホみたいに舞い上がって‥‥しかし何故男がいるなんて嘘をついたんです。見栄?」
「あんた‥‥読んだの?!」
さっきまで書いていた今日の日記
修斗が来たから本棚に置いた。
私が料理をしている間妙に静かだと思ったら
まさかそれを
「なかなか面白く書けてましたよ。モデルなんかよして、小説家になったらいい」
「変態!バカ!最っっ低!!!」
爆発しそうなほど頭に血が登り
顔から火が吹き出す。
モデルの仕事のこと
バイトのこと
夢も不安も希望も
心のままに書き綴っていた。
今日の一ノ瀬君との出逢いも
「帰って!!」
「また来ます」
「二度と来ないで!!このお金も持って帰りなさいよ!!」
玄関に向かう修斗を追いかけて
その背中に封筒を投げつけた。
携帯を操作しながら振り返った修斗は
怒りに震える私を平然と眺める。
「嬢。バイトを辞めてカネを使いなさい。ガキはガキらしくスネをかじればいい」
「何様よバカ!!」
「悔しかったら成功して、倍にして返せ」
色素の薄い三白眼が
私を突き放すように鋭く光った。
「‥‥今降りる。前に車を回せ」
修斗は散らばったお札に見向きもせず
部屋を出ていった。