禁断兄妹
第52章 由奈
その夜は眠れなかった。
日記を読まれた恥ずかしさや腹立たしさもあるけれど
───嬢はここに、何をしに来たんですか?───
モデルとして生きていきたくて我儘を通して東京までやって来たのに
生活に追われて夢を見失いかけていること
自分が一番よくわかっていたから
修斗の言葉は悔しいほど身にこたえた。
カーテンをめくった窓の外
星が一粒
高く明るく輝いていた。
───この娘はでかくなるってさ‥‥俺もそう思った───
一ノ瀬君の言葉が星と重なって
闇を照らす。
私は腕を伸ばし
手のひらを夜空にかざした。
一ノ瀬君が両手で包んでくれた右手
ガラス越し
光を掴む。
私はちっぽけなプライドを捨てて
あのお金を使わせてもらうことに決めた。