テキストサイズ

禁断兄妹

第52章 由奈


「‥‥だから始めからそうしろと言ってたでしょうが」


当然と言わんばかりの不遜な顔
口に放り込んだ漬け物をパリパリ噛み砕きながら


「嬢‥‥おかわり」


「ん」


あの一件からひと月
何度追い返してもそれまでと変わらず毎週のように平然とやって来る修斗に
いつまでも腹を立ててる自分が馬鹿らしくなってきて
結局いつもの風景。


「私は何でも自分で納得してからじゃないと嫌なの。たとえ遠回りでもそうしたいの」


「‥‥フン」


片方の口の端を上げたその表情は妙に愉快そうで
相変わらず憎たらしかった。

借りているお金の使い道はお小遣い帳に全部つけてある。
修斗に見せ必ず倍にして返すと言ったら又笑われた。


「会長もさぞ喜ばれるでしょう‥‥俺の顔も立ちます」


まるで信じていない軽薄な言い方にイラッとしたけれど
いつものこと
つまらない口喧嘩はしたくない。

有言実行
私は握った右手を見つめて堪えた。

レッスン
オーディション
ジム
それでも時間が空いた時はお小遣い分の単発バイト。

部屋では雑誌を読み漁り
表情やポージングを研究する毎日。

やるべきことを一つ一つがむしゃらにやっていく中で
仕事は少しずつ増え始めている。

夢に向かって歩いているという確かな実感が
私を強くしていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ