禁断兄妹
第52章 由奈
『二十歳のお誕生日、おめでとうございます』
十二月のある日の真夜中
仕事から帰ってきたら郵便受けに見慣れた筆跡のカード。
可愛らしいウサギのイラストがついたバースデーカードは
開くとオルゴールが流れた。
「これって修斗が自分で買いに行ったの?」
「‥‥いえ、ツトムに買いに行かせました」
早速電話すると
修斗はぶっきらぼうにそう言った。
「なぁんだ。どんな顔して買ったのかと思って、超面白いと思ったのに」
「今帰って来たんですか‥‥誕生日会だったんですか?」
「まさか。仕事よ」
修斗に向かって仕事だと言えることが誇らしかった。
誕生日会が開かれるほど親しい友達は多くないけれど
何人かにおめでとうメールをもらって
それだけで私は十分幸せだった。
「これすっごく可愛い。ありがとうね。ツトムさんにもお礼を言っておいて。それじゃあね」
「あ、嬢」
「うん?」
「今‥‥近くにいるんです」
「えー!なんだ早く言ってよ。上がっておいでよ」
やって来た修斗は玄関先で
会長からだと言って大きなバラの花束と可愛らしい箱を差し出した。
「わぁー綺麗‥‥!いい香り‥‥」
「改めまして、二十歳のお誕生日、おめでとうございます‥‥」
修斗は真面目な顔でそう言うと
開いた両足の膝に手を置いて腰を屈めた。
「ありがとう‥‥!でも毎度そのお辞儀やめてよ」
「祝い事は、ケジメつけないと」
「はいはい、あんたの世界の話ね‥‥ほら上がって」
箱の中にはピンク色のバースデーケーキ
2と0のキャンドルもついていた。
「可愛いー!」
修斗は仏頂面であらぬほうを見て
さっきから私と目を合わせようとしない。
二十本のバラの花束にピンク色のケーキ
バースデーカードもそうだけれど
およそ修斗には似つかわしくないプレゼント
こんなのを持って来るのは自分の意に反してて照れ臭いんだろう。
「‥‥何か可笑しいですか」
「ふふ、何でもない。極道も大変ね」