禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
悩みを話してはくれなかったけれど
一つだけわかったことは
柊君には自分が荒れているという自覚がほとんどないということ。
「和虎やママの好意に甘えるな。店に女がいることを快く思わない客のほうが多い」
「人のことを周りの人間に聞くのはやめろ。伝言ゲームになって話が歪むし、不快だ」
柊君の物の考え方は以前と何も変わってはいなくて
ただ伝え方や表現の仕方が
冷たく過激になっていた。
柊君の身に起きた何かが彼を自暴自棄にさせて
優しさに満ちた余裕を奪っている
そんな気がした。
「お酒ばっかり飲んで、カルシウムが足りないからイライラするんじゃないかな。はい、ちりめんじゃこのチャーハンだよ」
「‥‥誰がイライラしてるって?お前和虎に似てきたな」
情事を終えた後と
旨いと言ってくれた料理を口に運んでいる時は
穏やかな素の柊君を感じられる
それが私の存在価値だった。
いつも遠くを見ている昏い瞳
見上げる私を映すこの磨きあげられた硝子の向こうは
がらんどうの闇
その心を満たしたくて
「もっと来いよ由奈‥‥もっと、だ‥‥っ」
「はあ、柊君っ、来て‥‥もっと‥‥」
柊君も
私も
闇の中でもがいていた。