禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
「悪い‥‥今寝てたよな俺‥‥」
柊君は三十分ほどで目を覚ました。
「‥‥シャワー借りていい」
「うん‥‥タオルとか着替えとか、横の棚にある‥‥」
バスルームから漏れてくるシャワーの音が
雨音のよう
ベッドに身体を横たえたままぼんやり耳を傾けていると
バスタオル一枚で戻ってきた柊君
私の隣に腰を下ろし
その逞しい背中をヘッドボードに預けた。
沈黙が
流れていく。
「何かあったの‥‥?」
天井を仰いでいた柊君がゆっくりと首を巡らせ
私を見下ろす。
「‥‥お前こそ」
柊君は私の頭を静かに撫でた。
その手を絡め取って
大きな手のひらに頬を寄せた。
いつもならやんわりと振り払うのに
今日は私の頬に手を置いたままにしてくれる。
そして柊君が独り言のように話し始めたのは
ここへ来る前
和虎君がバイトをしているバーで二人で飲んでいたら
やって来た常連客に死相が出ていると言われた話。
「和虎もママも真っ青になってたな‥‥あの霊感野郎、さぞ実績があるんだろう」
私は身体を起こした。
「死相が出てる、気をつけろって言われても、どう気をつけりゃいいんだよ」
柊君はクスクス笑っているけれど
私は笑えなかった。
柊君とこんな関係になる少し前
あのお店に顔を出していた頃
───霊感っ子。見えちゃう人かなめっち───
和虎君にそう紹介された人のことを
思い出したから。