禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
理知的な眼鏡が似合う優しそうな男性
私には何が見えますか?
軽い気持ちで聞いたら
ボディガードのような男が見える
文字通り彼に守られて君がよく見えない
穏やかに笑いながらそう言われた。
並べられた私を守っているという男の風貌は
修斗そのものだった。
修斗の存在は友達にも誰にも話したことはない
初対面の彼が知るはずもない。
この人には本当に何かが見えているんだと
驚きと恐れを感じたことを鮮明に思い出して
胸に不安の雲が広がっていく。
「本当に?本当にそんなこと言われたの?」
「‥‥なんだその顔。お前まで真っ青かよ」
柊君が苦笑する。
「あれはきっと和虎の男だ。一緒にいた俺が気にくわなくて、しょうもないことを言っただけだよ」
そう言われても胸の雲は晴れない。
「やだな‥‥怖い」
抱きついて滑らかな裸の胸に頬を押し当てると
柊君は軽いため息をついた。
「お前も和虎と一緒な。くだらない悪意をいちいち真に受けるなよ」
「柊君は怖くないの‥‥?」
「怖い訳ないだろ。どうせはったりだ。当たってたとしても、長生きしたいとは思ってないから、別に構わない」
「死んじゃったら、もう会えなくなるよ」
「‥‥誰に」
柊君の声に鋭さが混じった。
「‥‥私にだよ‥‥冷たいな‥‥」
顔を上げると
面食らった表情をした柊君と目が合った。
「そうだな‥‥悪かった」
息を吐きながらそう言うと
柊君は私の肩を抱いてあやすように優しく叩いた。