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禁断兄妹

第53章 由奈~終わりの始まり~


残暑が遠ざかり
秋が深まっていく。

あの夜から私は柊君を想う時
同時にモエを思うようになった。

柊君を見つめる時
彼の中にモエを見るようになった。

───モエ‥‥───

柊君の夢に現れ
引き留めるようにその名を呼ばれた人

夢から覚めた柊君を
寂しさと虚しさで包んだ人

今までどんな女が何人いようと気にならなかったのに

───モエ‥‥───

消えゆく残像へ手を伸ばすように
苦しげに二度繰り返されたその名前

一体誰なの

柊君の最後の彼女は確か違う名だった
噂がある取り巻きの女性達の中にもその名はなく
彼の周りで近しい人が亡くなったという話も聞いたことがなかった。


「モエって、誰‥‥?」


柊君に何度も聞こうとして
喉元まで出かかっては飲み込んだ。
私との関係を絶たれるような気がしたから。

あの夜から
モエが私の胸を離れることはなかった。

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