禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
「和虎君‥‥柊君の彼女とかで、モエって人、知ってる‥‥?」
たまには顔を見せなと誘われて
あの日以来久しぶりに来たお店
こんなことを和虎君に聞くべきじゃないってわかっていながらも
二杯目のジンライムを飲み終えた時
私の口は勝手に動いていた。
「‥‥知らないし、もし知ってたとしても、言わない」
「‥‥」
「そういう詮索を柊兄は嫌うわ。あんたもわかってるでしょ」
和虎君と会うのはあの日以来だったけれど
私と柊君の関係は察しているようだった。
「寝言でね、呼んだの。モエ、って‥‥」
手の中のグラス
カリンと氷が回る。
「‥‥」
「私みたいなどうでもいい女の内の一人だって思いたい‥‥でも、違うような気がするの」
和虎君がため息をついた。
「‥‥違ってたら、どうするの?」
真摯な声に顔を上げると
目の中を覗き込むようにじっと見つめられた。
モエがどうでもいい女とは違っていたら
私が感じた通り
柊君にとって大切な
かけがえのない人だったとしたら
「あんたはそれを確かめて、どうしたいの‥‥?」