禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
静かな問い掛けが
私の心を揺さぶる。
「私は‥‥もしかしたらモエを失ったことが、柊君が荒れてる原因なんじゃないかって、思って‥‥それで‥‥」
「それで‥‥?」
和虎君はじっと私を見ている。
「私は‥‥」
モエのもとへ帰ることが柊君の幸せなら
どんなことをしてでも帰してあげたい。
それが叶わず
迷いもがいているのなら
今はそばにいて
その心と身体を癒してあげたい。
だけど
同じだけの強さで思っていることが
本当はもう一つある。
帰ることなど永遠に叶わず
このままずっと私のそばにいればいいと
柊君の幸せを願いながら
不幸せな柊君を癒すことに自分の存在価値を見いだしている。
胸に渦巻く矛盾だらけの想い
表す言葉を探して
でも見つからなくて
うつむいた。
涙が落ちた。
「愛に迷ってるのは、あんたも同じね‥‥柊兄だけじゃない。みんなそう‥‥」
カウンター越しに伸びた和虎君の手が
私の頭にそっと置かれた。
「真実なんて、愛の前ではなんの助けにもならないわ‥‥暴くのはお止めなさい。好きって気持ちは変わらないし、止められもしないでしょ‥‥」
口を開くと泣き出してしまいそうで
引き結んだまま頷いた。
拭っても又涙が溢れた。