禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「‥‥しかし嬢、本当に綺麗になりましたね」
ガラスで区切られたVIPルーム
ウーロン茶を出してくれたツトムさんは
私を振り返りながら慣れた手つきでカーテンを引いていく。
「さっき地味にびびりましたもん。雑誌で見るより遥かにお美しいので」
店内よりも一段と高級そうな調度品が
柔らかな間接照明の中で飴色に浮かび上がる。
めっちゃいい匂いもするし、と
目を閉じ空気をすくい取るように両手を動かす姿に私は笑った。
「ツトムさん、ホストもしてるんだっけ。うまくなったね」
よそよそしさが消えて
ツトムさんらしさが出てきたことが嬉しい。
「たまにヘルプしてますけど、お世辞じゃないですよ。嬢は昔から美人でしたけど、固さや冷たさがあった気がします。今はなんていうか、大人の女の柔らかさとか色気が滲み出てますよ」
「そうかなあ‥‥でも、そう言ってくれるのは嬉しい。ありがとうね」
そう言った私を
ツトムさんは真面目な顔でじっと見た。
「嬢‥‥俺ちょっと誤解してました。すみません」
「え‥‥?」
「嬢が変わっちまって、カシラに迷惑かけるようになったのかと、思ってたんです」
「‥‥」
最初にツトムさんから感じた警戒心は
そのせいだったのかな
「ここ最近、嬢のとこに行く度にカシラの機嫌が悪くなって‥‥嬢が我儘言ってカシラを呼びつけて、怒らせてるのかなと、思ったりしてました‥‥でも、どうやら違うみたいだ」
「え‥‥?呼びつけたことなんて一度もないわ。それよりも今、行く度に機嫌が悪くなるって言った?」
「ええ」
ツトムさんは当然のように頷いた。