禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「まさか‥‥嘘よ」
確かに和気あいあいとしてる訳じゃないけど
この前もあんな形で別れたままだけど
「たまには険悪な雰囲気になることもあるわ。でも、いつも喧嘩してる訳じゃない。本当よ」
大抵はポツポツと私の近況を話しながら
二人で静かにご飯を食べてるだけ
私がそう言うと
ツトムさんは首の後ろを擦りながら複雑な表情をした。
「今年の夏‥‥7月の最後の辺りかな。嬢のマンションから出てきたカシラが車に乗った瞬間、俺の座る運転席の頭のとこ、いきなり後ろから足でガーン!『とっとと出せ!』ですよ。
枕みたいなとこ壊れましてね。軽いむち打ちになりました。その前から機嫌が悪くなる時がたまにありましたが、本格的に悪くなったのはそれからです。
‥‥身に覚えありませんか?」
「‥‥っ」
柊君とそういう関係になった後に
初めて修斗と会った日のことだろうか。
帰り際
来る日をあらかじめ教えてと言ったら
一ノ瀬柊はやめておけと釘を刺された。
───あの男の部屋に行ったんですか。それともホテル?───
───そんな腑抜けぶりでは、いずれ仕事にも支障が出る。もう会うのはやめなさい───
確かに厳しい顔はしてた
でもそこまで怒っていた記憶はない。
「それからは必ずご自分で運転して、一人で行かれるようになりました。店を抜けてる、車がない、となると嬢のとこだと。みんな戦々恐々ですよ」
「本当に‥‥?話、大きくしてない?」
「実話っすよ実話!でもカシラには確かめないで下さいよ、内緒の話です。でないと俺の首、本当にもげちまいますからね」
「‥‥わかったわ」
「この前の週刊誌‥‥女子アナのスキャンダルに絡めて嬢のイニシャルが出たヤツ。あれ読んだ後のカシラも、酷かった‥‥」
ツトムさんは遠い目をして小さく笑った。