禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「俺は同伴に出掛けたことになっている‥‥後はツトムに任せておけばいい」
「‥‥」
「猿芝居をありがとうございました‥‥」
猿芝居
思いがけず冷たく突き放されて
言葉に詰まる。
私は濡れている頬を手の甲で拭った。
「何よ‥‥どうして出てきたのよ‥‥私なんかに会いたくないんじゃなかったの」
「ツトムから伝言を聞きませんでしたか‥‥落ち着いたら又東京へ行くと」
「聞いたけど‥‥」
「俺は役目を降りるつもりはない‥‥さっき会長から電話があった時も、そう答えた。好きにしろと言われたんで、好きにする」
会いたくなかった訳じゃないと
ただ落ち着いてなかっただけだと
そう言いたいんだろうか
「よくわからないわ‥‥どうして最初から出てきてくれなかったの」
「言わなくてもいいことまで言ってしまいそうで、会いたくなかった‥‥」
「怒ってるなら、何でも言いたいことを言えばいいじゃない‥‥我慢することないわ」
「‥‥俺が我慢してるのは、怒りの言葉じゃない‥‥」
低い声に
苛立ちなのか熱が混じった。
気圧されて
それきり途切れた会話
張り詰めた空気の中
ふっと動きだしたワイパーに
いつの間にか降りだした雨を知る。
私は
かけたままだったサングラスを外した。
激しい雨が窓を叩き
濡らしていく。