禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「そんな事を言いに店まで来たんですか。あの約束をしに来たのかと、思ったのに」
―――会わないと約束して欲しい―――
執拗に食い下がり
初めて怒りの表情を見せた修斗を思い出す。
「柊君とはずっと会ってない‥‥今はパリに行ってるらしいわ‥‥」
「このまま二度と会わなければいい」
「二度と?そんなの嫌よ‥‥今この瞬間だって、会いたいのに」
名前を口にしたせいで
想いが溢れる。
ふらりと返ってきたパリにいるというメールに
帰ってきたら会いたいと
美味しい日本食いっぱい作ってあげるよと書いた。
返事は無かった。
「もしメールをくれたら、きっと私は何も考えずに、走って駆けつけちゃう‥‥だから、約束はできない」
「嬢、あなたは本当にバカだ」
遠慮の欠片もない言い方に煽られて
「だから、バカだって言ったでしょ。会いたいの、どうしようもないの‥‥っ」
自分の声が大きくなっていくのを感じる。
「どうしようもない感情を、ねじ伏せる強さを持て」
「私は、修斗みたいに強くないのよ‥‥っ」
思わず声を荒げた。
「強さが持てないなら、俺が護る‥‥」
力を秘めた低い声が
冷たく響いた。
「盾にも刀にもなる。金がいるなら、俺が用意する。
‥‥それが俺の役目だ」