禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「見えてたの‥‥?」
驚きで涙は止まって
サングラスを持つ形のまま
手も身体も固まっていた。
「ええ」
「黙って勝手に見ないでよ‥‥」
「いつも黙って勝手に見てる」
事も無げに言われて言葉に詰まる。
修斗には敵わない
私は息を吐きながら両手を膝の上に置き
窓の外を眺めた。
強い雨はまだ止まない。
「‥‥雨が降ると、檻の中みたいだと言った嬢の言葉を、思い出します」
修斗がゆっくりと口を開いた。
「あの日‥‥初めて会ったあなたは、二度目の自殺未遂を起こして、ベッドの上にいた‥‥」
私は十三歳の時
愛犬の死を引き金に続けざまに二度自殺未遂を図り
二度目は本当に死にかけた。
その時が
私と修斗の関係の始まり。
「‥‥覚えてるよ‥‥雨が降ってたね」
病室の窓から見た
真っ直ぐに空から落ちてくる雨
私と修斗を囲う冷たい檻のように見えた。
「見失いそうな時は、いつもあの日のことを、思い出します‥‥」
修斗の静かな呟きに
見失いそうな時
その意味を考えながら
私の意識も
あの日へと還っていく───