禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「どうして死にたいんですか」
低く冷ややかな声
直球で問いかけられた。
「‥‥自由になりたかったの」
孤独感から
あの家から
「自由?‥‥逃げたかったんでしょう」
躊躇いもなく一蹴されて
思わず顔を向けると
冷ややかな三白眼と視線がぶつかった。
腫れ物に触るような他の大人達とは明らかに違うこの男に
逆に興味が湧いた。
「橘さん」
「修斗でいいです」
「じゃあ、修斗。修斗はどうして組に入ったの。私はあの家から逃げたくて、たまらないのに‥‥」
「行くところがなかった俺を、会長が拾ってくれたんです」
「お家は?」
「事件を起こして家族とは絶縁状態になって、女の家を転々としていました」
修斗の口調は淡々としていたけれど
窓の外へ流した視線が
これ以上立ち入るなと言っているように思えた。
「そう‥‥私と同じようなものね」
「どういう意味ですか」
「私の話、誰かから聞いた?」
「組長夫婦の娘で、会長にとって大事な孫だと。それだけです」
「そっか‥‥入ったばかりだから知らないんだね。どうせその内耳に入るだろうから言うけど、私は会長の隠し子なの」
組員にとってこの事実は公然の秘密だった。
「顔、似てるでしょ」
「ええ‥‥」
修斗は初めてその瞳に驚きの色を浮かべていた。
「行くところがないのは私も同じだわ‥‥」