禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
私の母親はおじいちゃんのお気に入りの妾で
私を生んでまもなく病で亡くなったそうだ。
おじいちゃんは気性の荒いおばあちゃんの手前
自分の娘として私を引き取ることができず
息子夫婦の養女として引き取ったと聞いた。
「そうですか。複雑ですね」
「修斗だって複雑でしょ‥‥」
そのまましんとする室内
窓ガラスの向こう
空と地面を繋ぐ雨の雫をぼんやりと眺める。
「檻の中にいるみたいだわ‥‥」
心だけが息苦しいこの檻をすり抜け
冷たい雨に煙る街を駈けていく。
「‥‥出たいですか」
「出ようとしてこの様よ」
「未成年の内は何かしらの庇護が必要だ‥‥檻の中はある意味安全です」
「‥‥」
庇護
安全
そんなものと言いそうになったけれど
家族とは絶縁状態だという修斗の前では言えなかった。
「今は潤沢な脛をかじりながら、力をつければいい。そして大人になったら、金銭的に自立できる仕事につけばいい」
「自立できる、仕事‥‥」
「それが檻を出る必要条件です」
「‥‥」
「俺はここで生きていきます。あなたはいつか自分の力で檻を出て、自由になればいい」
自分の力で檻を出て
自由に
その言葉は
私の胸の中に光を放ちながら深く沈んでいった。
「私にも、できるかな‥‥」
「できる。それまでは俺が側にいます‥‥」
修斗は鋭い瞳を和らげて
やっと微笑んだ───