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禁断兄妹

第55章 由奈~終わりの始まり③~


『アパートにいる?さっき仕事が終わったんだ。これから行ってもいいかな』


形になった溢れ出た想い
夢中で送信した。


───嬢‥‥!───


そんな大声出さないで
うるさい

振り払うように立ち上がった。

だて眼鏡をかけ
帽子を被り
ぐるぐる巻きにしたマフラーを鼻先まで引き上げて
あの夏の夜に一度だけ訪れた柊君の部屋へと向かった。

呼び止める修斗の声が
頭の中に何度も響いたけれど


「大丈夫‥‥ちゃんと気をつけるから‥‥」


誰にも見られないようにするし
もしアパートに着くまでに来るなと言われたら
必ず引き返すから

胸の内でそう繰り返しながら
足を早めた。

止まらない甘やかな鼓動
熱い額に冷えた空気が心地いい。


───嬢、あなたは本当にバカだ───


わかってる

お願い
黙って行かせて

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