禁断兄妹
第55章 由奈~終わりの始まり③~
五度目のベルで細く開いたドア
暗がりの中の柊君は気だるげな表情で私をちらりと見やると
ため息をつきながら項垂れた。
「本当に来る奴がいるかよ‥‥」
その呆れ声には
気のおけない仲のような親しみが感じられて
私の背中を押す。
「だって返信なかったから、いいのかと思って」
「寝ちまっただけだ‥‥過大解釈するな」
「‥‥」
「帰れ。寒いから閉めるぜ」
本当に閉められそうになって
慌てて扉を手で押さえる。
「じゃあ、お土産貰ったら帰るから、とりあえず中に入れて」
そう言ったら
柊君は小さく咳をするように吹き出した。
「何が土産だよ‥‥」
前髪をかきあげながら身体を起こすと
諦め顔で
私が通れるだけドアを開けてくれる。
「‥‥入れば」
「うんっ、お邪魔します」
小さな玄関
足を踏み入れた私の背中に柊君が腕を伸ばし
鍵をかける。
目の前にパジャマ姿の広い胸
見上げると無防備な寝起きの顔と目が合った。
初めて見る無精髭
寝癖のついた髪
「お前は一回言い出したら聞かねーからなあ‥‥」
愛しさが息苦しいほど込み上げる。
「ごめん‥‥どうしても会いたかったの」
ぎゅっと抱きついた。
又一つため息が聞こえて
それすらも胸に甘く沁みる。
やっぱり好き
大好き
夢もこの恋も
どちらも手離せない