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禁断兄妹

第55章 由奈~終わりの始まり③~


相変わらず殺風景な柊君の部屋
物が増えた様子もなく
本当に住んでいるのかと思うほど生活感がない。


「‥‥今何時だ」


「八時。夜のだよ」


柊君は掛け布団が大きく捲りあげられたベッドにゆらゆら歩いていくと
息を吐きながら身体を潜り込ませた。


「もしかして具合悪いの?」


「違う。ひどく眠いだけだ」


「時差ぼけなんだね」


柊君は頷くと
あくび混じりの声でスーツケースの中から黒いパーカーを取ってくれと言った。

床の上には開けたままのスーツケース
そこから出したらしい包みや服が周りに散らばっていて


「帰って来たばっかりって感じ」


「今日の朝だ。そっからずっと寝てた‥‥」


こんな状態なのにメールをくれて
部屋にも入れてくれて
私は特別なのかなって思わず勘違いしそうになる。


「‥‥‥これ?寒いから着るの?」


ベッドの横に膝をついてパーカーを差し出すと


「そのポケットの中‥‥」


柊君が顎を動かす。

言われるままにお腹のところについているポケットに手を入れると
指先に何か紙のようなものが触れた。


「たいした物じゃないけど‥‥いつも飯を食わせてもらってる礼‥‥」


「えっ、まさかお土産‥‥?!」


「‥‥何びっくりしてるんだよ。貰ったら帰るって言ったのは、お前だろ」


フランスの新聞紙に包まれたそれは
卵ほどの小さな陶器のウサギだった。


「可愛い‥‥!!」

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