
禁断兄妹
第57章 会いたかった
「そいつのことだけど‥‥萌から聞いて、ちょうど母さんと話したいと思ってたんだ。その灰谷ってコンシェルジュ、大丈夫?」
「大丈夫って?‥‥どういう意味?」
「萌のことを変な目で見てるんじゃないのかって、こと。菓子のやり取りとか、必要以上に萌をかまい過ぎだろ」
柊の言葉にお母さんは目をしばたたかせた。
寝耳に水のような反応に柊がため息をつく。
「萌だってもう年頃の女の子なんだから、母さんはもっと気を配って欲しい。何かあってからじゃ遅いだろ」
「まさか‥‥ねえ萌、灰谷さんに何か言われたりしたの?」
「言われた訳じゃ、ないけど‥‥」
「俺が嫌なんだよ。心配だ」
穏やかに
でもはっきりとした口調でそう言うと
「今は父さんも俺も家にいなくて、女二人の暮らしだろ。スイーツ仲間だか何だか知らないけど、あんまり気を許すのはどうかと思う」
柊はゆっくりと私の頭を撫ぜた。
「萌。あからさまに避けなくてもいいけど、これからは挨拶程度にとどめておきなさい。レディは男性と距離を置くものだよ」
頭の上から優しい声が降る。
「うん‥‥」
「‥‥さすがお兄ちゃん‥‥考えることが違うわねえ」
お母さんは感心したように頷いて
わかったわ、ちょっと気を付けるね、と真面目な顔をした。
「さっき下にいた人に聞いたら、灰谷は合宿とかでしばらく休みらしいけどね。又戻って来るだろうから。頼むよ、母さん」
柊は首を傾けお母さんに笑いかけると
時計を見上げた。
「そろそろ行こうか萌。遅れるとどやされる」
