禁断兄妹
第57章 会いたかった
萌の前にストロベリージュースと
和虎があらかじめ店に頼んでおいたという
俺達と同じワイングラスに注がれた赤いグレープジュースが置かれた。
わあっ、と
驚きと喜びの入り交じった小さな声をあげる萌
「乾杯用にね。一緒のワインみたいでしょう」
「はい!」
「お前のマメさには感心するな」
「大好きな萌ちゃんを囲む会だもの、これくらいするさ!」
「いつから囲む会になったんだよ」
俺と和虎のグラスには赤ワインが注がれていく。
そのボトルをテーブルに置いた店員に
どうせすぐ空くからもう一本持ってきておいてくれと俺が言うと
和虎は芝居がかった真面目な顔を萌に向けた。
「萌ちゃん、人間の七割は水で出来てるって言うけど、柊兄は水じゃなくてアルコールで出来てるんだ」
笑いを堪えるように口元を手で覆う萌
大きな瞳が
楽しそうに瞬いている。
「そして残り三割はタブレット菓子‥‥ミントやら何やらのツブツブなんだ」
「ツブツブ?!」
「そう。柊兄はあのツブツブを完全栄養食だと固く信じてるんだ」
「信じてねーよ!」
萌の笑い声が弾ける。
「でもこれからは君がちゃんとご飯を食べさせて、柊兄を普通の人間に戻してあげて欲しい。ツブツブのCMオファーは来るかも知れないけど、その前にFBIに連れ去られて研究材料にされてしまうからね」
「いつにも増して適当かつしょーもないな‥‥萌、あまり笑うな。和虎が調子に乗る」
「そういえばさっきも食べてた‥‥ふふっ!」
「俺の顔見て吹くなよ」