禁断兄妹
第57章 会いたかった
「そして柊兄。
今日の柊兄を見て、俺は長い夜が明けたように思った。待ち望んでいた夜明けだよ‥‥今の柊兄からは温かな命の鼓動を感じる。本当に眩しいばかりだ」
「‥‥お前には、世話かけたな。色々、すまなかった」
和虎は首を振り
言葉に詰まって
俯くと目尻を擦った。
俺と和虎にしかわからない
深いものがあった。
和虎の前で人目も憚らず泣いたあの夜から
何もかもがどうでもよくて
自分の痛みに囚われて
他人の痛みは気にならなかった。
諌める和虎の胸ぐらを掴んだこともあった。
「見捨てずにいてくれて、ありがとうな‥‥」
和虎が顔を上げた。
涙を堪えたくしゃくしゃな笑顔
「見捨てるかよ。言ったろ、俺は柊兄から離れたりしない」
その声は温かく
力強かった。
「萌ちゃんは柊兄の彼女だけど、それ以前に俺の友人だ‥‥俺が声をかけて食事に誘って、色々な話をして、仲良くなったんだからね。萌ちゃんは心の美しい素敵な女性だ。
‥‥萌ちゃんを、よろしく頼みます」
「ああ。‥‥大切にする」
潤む瞳に俺と萌を映し
黙って頷く和虎
「愛に形はないけれど、今俺の目に映ってるものは、愛なんだなと、思う。
見せてくれてありがとう‥‥俺は本当に幸せだ」
そしてグラスを持った手を前へと伸ばした。
「今日は楽しく過ごそう。二人に幸あれ‥‥乾杯っ!」