禁断兄妹
第57章 会いたかった
俺の鉄板ネタを一通り話して萌を大いに笑わせた和虎
「ところで萌、最近部活はどーお?頑張ってる?」
今度は萌に話を振る。
「はい。コンクールに向けて朝練したりしてます」
「朝練!その言葉久しぶりに聞いたわ。授業の前に練習するんだよね?どんなことしてるのか教えてー」
和虎は萌の学校生活の話が妙に好きだと言って
何気ない話を細々と聞き出して嬉しそうに耳を傾ける。
身振り手振りを交えて生き生きと話をする萌
可愛い
「萌の話を聞いてると、中学生を疑似体験してるようですごく楽しい。柊兄が聞きたがるのわかるわ」
「だろ。萌との会話は、昔から俺にとって一番の癒しだ」
斜に構えすかしたガキだった俺の
明るく楽しいものだったとは言えない子供の頃の記憶
萌の瞳を通して語られる
友人に囲まれ家族に温かく見守られた幸せな世界は
俺の灰色の記憶を慰めるもう一つの人生
「萌は勉強も部活も本当に頑張ってるよねー。ねえ萌の将来の夢って、何?」
「夢、ですか‥‥えっと‥‥」
恥ずかしそうに言い淀む萌
「俺も聞きたい。前はお菓子屋さんだったよな。今は?」
萌は
本当に夢ですけど、と前置きして
「音楽の大学に行って‥‥そしてフルートの奏者になりたいかなって‥‥最近思うようになりました」