禁断兄妹
第57章 会いたかった
会話と食事を楽しみ
笑い
グラスを重ねる。
光に満ちた暖かい部屋は居心地が良く
笑い声は極上の音楽だ。
こんなにも楽しく身も心も満たされる食事は
初めてかも知れないと思った。
「二人を見てると、なんだか犬の散歩を連想するわー」
食事会も終盤
俺と萌を見ていた和虎がそんなことを言い出した。
萌はデザートのジェラートを
俺と和虎はまだワインを飲んでいた。
「なんだそれ」
「散歩の時にさあ、進行方向じゃなくて飼い主ばっかり見てる犬いるじゃない。あれ」
「お前なあ‥‥萌は犬じゃないぞ」
「犬は萌じゃないわよ。柊兄よっ」
「はあ?」
「萌は普通にアタシか柊兄か、喋ってるほうを見たり食事を見たりしてんのに、柊兄は萌ばっか見てる。身体が常に萌のほう向いてて、若干身ぃ乗り出してんの。
‥‥ほら、今もそうでしょ」
萌が吹き出す。
和虎に指差された俺は
確かに萌の椅子の背もたれをひじ掛け代わりにして頬杖をつき
身体を萌の方へ向けていた。
「ねえ萌もそう思うでしょ?柊兄見たら絶対目が合うでしょ」
「ふふっ‥‥はい」
「深い愛ゆえとは言ってもねー、こんなにじろじろニヤニヤ見られて困らない?どうなの萌的には」
「昔から二人でいる時はこういう感じなので、別に‥‥」
「こういう感じって、じろじろニヤニヤは否定してくれよ」
「ふふ、だってー」
俺は悪戯っぽく笑う萌の頬を柔らかくつまんだ。
「昔からこうなの?柊兄、よく今まで不審者扱いされなかったね!」
「二人でいる時はって言っただろ。人前では普通にしてんだよ」
つまんだ頬の感触が心地よくて
指で確かめるようにその弾力を楽しむ。
「自分で普通って言った!今は普通じゃない自覚があるんだ」
「だから嫌だったんだよ、お前に萌を会わせるの」
ため息をつく俺の鼻を
お返しとばかり萌がつまむ。
「萌、苦しい」
「へへー」
「はいはい、イチャイチャしたいのね。全く微笑ましいこと。トイレ行ってくるから、最後に五分だけどーぞっ」