禁断兄妹
第57章 会いたかった
店員と話をしながらカードで会計をしていると
萌も階段を下りてきた。
俺に向かって大事そうに持っていたブーケを差し出す。
「お手洗いに行ってくるから、ちょっと持ってて欲しいの」
「ああ。場所わかる?」
「大丈夫だと思う。‥‥ふふ、お花似合う!」
「お褒めに与り光栄」
俺はブーケを頬に寄せて微笑んで見せた。
「‥‥そうだ萌。手を出してご覧」
素直に差し出された手のひらへ
俺は取り出したケースから二、三粒を振り出した。
「はい口に入れて」
「ツブツブ!」
萌は嬉しそうに一粒づつ口に運びながら
「あ、お水で飲むんだっけ?」
楽しそうに笑う。
「萌‥‥その話はもう忘れて。ほら、ここで待ってるから行っておいで」
スキップするような足取りの後ろ姿を見送りながら
店員から受け取ったカードを財布へしまっていると
「失礼ですが、一ノ瀬柊さんでいらっしゃいますか‥‥?」
不意に低い声が聞こえた。
声のした方へ顔を向けると
そこにはいつの間にか
髪をオールバックに固めたスーツ姿の男が立っていた。
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