禁断兄妹
第58章 嵐の夜
やがて四角い明かりは消え
冷たい闇の中
取り残された私の荒い呼吸だけが響く。
いつか自分の生い立ちが
モデルの仕事をしていく上で障害になるかも知れないと覚悟はしていた。
でもそれは遠い先のいつかであって
今ではないと思っていた。
まさか今こんな形で現実になるなんて
彷徨う視線の先
サイドテーブルの上に仄白く浮かびあがっている
柊君がくれた小さなウサギ
───契約は解除する。明日からの仕事は全部白紙だ───
「‥‥っく‥‥う‥‥」
吐き気にも似た嗚咽が込み上げて口に押し当てた毛布
そのまま突っ伏した。
他の誰のせいでもない
不確かないつかを
最悪な形で今に招いたのは私
「‥‥ひっく‥‥っく、う‥‥っ‥‥」
奥歯を強く噛み締めて
胃が痙攣するような嗚咽を飲み下す。
バカな女
あんたに悲しむ資格なんてない
涙を流す資格なんて
ないのよ