禁断兄妹
第58章 嵐の夜
闇の中で研ぎ澄まされた五感
ドアの隙間に顔を寄せている修斗の姿が見えるよう
ごめん修斗
ごめんなさい
合わせる顔がない
震える身体を両手で強く抱き締めて
息をひそめ
足音が遠ざかることを祈る。
「嬢‥‥開けます‥‥」
聞こえた言葉に耳を疑った。
鍵が差し込まれドアが開く音に愕然とする。
嘘‥‥
素早く中に入りドアを閉めた修斗
「鍵は会長から託されたものです。失礼します」
一方的な言葉と共に
靴を脱ぎ短い廊下を歩く音
玄関からこの部屋までの間に扉はない
お互いの姿が視界に入る僅か手前で修斗は足を止めた。
「‥‥いるなら返事くらいしたらどうですか」
静かに投げかけられた声
あまりの驚きで
開いた口からは掠れた息しか出てこない。
「会長のご指示です。ここをすぐに引き払い、あなたを家に連れ戻すように、と」