禁断兄妹
第58章 嵐の夜
「今すぐ身の回りの物をまとめてください。下に車を回します。残りの荷物は後で若い連中に運ばせるので、そのままでいい。
‥‥聞こえていますか?」
不意に問い掛けられて
真っ白な頭が揺さぶられる。
「どうして‥‥」
無意識に口だけが動いた。
「どうして?‥‥理由はあなたがよくわかっているはずだ」
感情を排した声
失望も怒りもない
それが尚更胸をえぐる。
「あなたの暴露記事が載った週刊誌は、明日店に並ぶ。内容は全て把握しています。ここも騒がしくなるでしょう‥‥夜が明ける前に離れたほうがいい」
週刊誌はまだ発売されていなかった
それでも情報を掴んだ修斗は動いた
どんな記事が書かれているのか
想像に難くない。
「さあ、出る用意を」
闇の中に浮かび上がる
扉を開けた檻
サーカスの動物のように収められ
運ばれる
「嫌よ‥‥行かない、ここにいる‥‥」