禁断兄妹
第58章 嵐の夜
「この部屋の名義人は会長です。明日には解約手続きを行います。もう住めません」
「じゃあホテルにでも泊まって、どこか他に住む部屋を探す‥‥」
「無職で実家がヤクザの女性に部屋を貸す不動産屋があるとは思えない。会長の情けに感謝して、今は黙って家に戻るべきです」
事務所から契約を解除されたこともお見通しなの
たちまち追いたてられ
冷たい檻が目の前に迫る。
「新しいモデル事務所を探すわ‥‥移籍の話だって、専属の話だって来てたのよ、探せばきっと───」
「嬢」
鋭い声が飛んだ。
「どんなにみじめで悔しくても、退かなければならない時がある」
「‥‥っ」
「今は負け戦だとしても、引き際を見誤らなければ、必ず再起の時が来る」
目の奥が熱くなって
溢れそうになるものを必死で堪えるけれど
端から零れ落ちていく。
再起の時なんてある訳がない
あんただってわかってるくせに
「泣くな。みじめで悔しいのは、あなただけじゃない」
一言も私を責めない修斗の静かな声に
歯軋りするような熱が滲んだ。