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禁断兄妹

第58章 嵐の夜


「わかった‥‥用意、する‥‥」


震える両足をベッドから下ろし
床につけた。

ずっと横になっていたせいか
力が入らなくてうまく立ち上がれない。
膝が笑ってる。

負け犬

そんな言葉が頭に浮かんだ。

ふらふら
身の回りの物をバッグに詰める。

お財布、化粧品、携帯


「電気、つけましょうか」


「目が慣れてるから、見えるわ‥‥つけないで」


荷物をまとめる姿を明るい照明の下に晒すのは
あまりにもみじめだ。

携帯に電源を入れると午前零時

夜が明けるまでにこの部屋は
からっぽになるんだろうか

夢と恋を追いかけた部屋
その片隅に座る
柊君がくれた小さな白ウサギ


「おいで‥‥」


声をかけて手に取った。

冷えたウサギを手のひらに乗せた瞬間
もうこれだけでいい
そんな気がした。

あの日柊君の部屋に行ったこと
後悔していないと言えば嘘になる
だけど
誰がどんなに止めても
あの日の私は行っただろう。

───お前は一回言い出したら聞かねーからなあ‥‥───

すべすべとした丸い背中を指先で撫でていると
携帯が鳴った。

それは
柊君の着信メロディだった。

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